2008年 12月 07日
掾と吏 |
長沙呉簡についてふれた,http://sekio516.exblog.jp/tb/9011226(08/11/18)に,賦税納入簡に,納入者として勧農掾が出てくること,その人物が別の納入簡では「郷吏」として見えていることなどについてふれた.一方,竹簡3に頻出する「出」簡(冒頭が「出」字で始まるもの)は,某所(三州倉?)から出されて州中倉に入るものである.これについては別途あらためてエントリーするつもりだが,収納に関わった吏員について,掾と史の2名の名前が見えている.コンビを組むメンバーは一定しており,例外はない(今のところ,だが).ただ一部の簡に,掾を「倉吏」とするものがある.すなわちこの場合は,倉吏と史の2名なのである.名前は同じなのだが,先の「勧農掾」と「郷吏」のように,肩書だけが違っているのであって,掾が或る場合には,倉吏に置き換わっているのである.おそらくこの掾は,倉曹掾なのであろう.
この2例からわかるのは,掾こそが某吏と呼びうる存在だったということである.9011226でも書いたように,勧農掾が郷に置かれたわけではない.勧農掾によっては,複数の郷を担当することもあったようだが(さしあたり複数の郷名を併記する吏民田家莂の表題簡を根拠に上げておきたい),これを「郷吏」と称したのは,郷の仕事をするからであろう.また郷の仕事をするのはもっぱら勧農掾だったのであろう.倉曹掾がもっぱら倉の仕事をするから「倉吏」と呼ばれたように.
とすれば,同じくtb/9019210(08/11/19)にエントリーした「白」文書に関しても,正面の「典田掾」と,背面の「典田吏」が同一の内実を有する可能性が出てくる.正背とも「郷」と冠されているので,彼らも郷を担当していたのであろうが(実際に郷ごとに違った典田掾の名前がある),勧農掾とは異なり,必ずしも郷ばかりを担当してはいなかったのではないか?また全ての郷に,担当の典田掾がいたというわけではなかったのではないか?だからこそ逆に,いちいち「郷」字を冠していたのではないだろうか.
もう一点,税種の一つ,限米には,「吏帥客(旱)限米」というのがある.ここに出てくる吏・帥・客のうち,吏と帥は「白」文書の背面の「典田吏及帥」の吏と帥であろう(もちろん,典田吏と典田帥に限定する必要はない).となると,残りの「客」とは,いかなる存在なのであろうか?隷属性の強い佃客ではないとは思うのだが,その可能性を全面的に排除できるというわけではない.
さらにもう一点,先の「郷吏」というのが,郷の仕事をする吏という意味であるならば,県吏・郡吏・州吏というカテゴリーも,県に所属する吏・郡に所属する吏・州に所属する吏というようなストレートな解釈で本当に良いのかどうか,考える必要があるのではないか?
あらためて先行研究に立ち返るべき時が来たようである.
この2例からわかるのは,掾こそが某吏と呼びうる存在だったということである.9011226でも書いたように,勧農掾が郷に置かれたわけではない.勧農掾によっては,複数の郷を担当することもあったようだが(さしあたり複数の郷名を併記する吏民田家莂の表題簡を根拠に上げておきたい),これを「郷吏」と称したのは,郷の仕事をするからであろう.また郷の仕事をするのはもっぱら勧農掾だったのであろう.倉曹掾がもっぱら倉の仕事をするから「倉吏」と呼ばれたように.
とすれば,同じくtb/9019210(08/11/19)にエントリーした「白」文書に関しても,正面の「典田掾」と,背面の「典田吏」が同一の内実を有する可能性が出てくる.正背とも「郷」と冠されているので,彼らも郷を担当していたのであろうが(実際に郷ごとに違った典田掾の名前がある),勧農掾とは異なり,必ずしも郷ばかりを担当してはいなかったのではないか?また全ての郷に,担当の典田掾がいたというわけではなかったのではないか?だからこそ逆に,いちいち「郷」字を冠していたのではないだろうか.
もう一点,税種の一つ,限米には,「吏帥客(旱)限米」というのがある.ここに出てくる吏・帥・客のうち,吏と帥は「白」文書の背面の「典田吏及帥」の吏と帥であろう(もちろん,典田吏と典田帥に限定する必要はない).となると,残りの「客」とは,いかなる存在なのであろうか?隷属性の強い佃客ではないとは思うのだが,その可能性を全面的に排除できるというわけではない.
さらにもう一点,先の「郷吏」というのが,郷の仕事をする吏という意味であるならば,県吏・郡吏・州吏というカテゴリーも,県に所属する吏・郡に所属する吏・州に所属する吏というようなストレートな解釈で本当に良いのかどうか,考える必要があるのではないか?
あらためて先行研究に立ち返るべき時が来たようである.
by s_sekio
| 2008-12-07 12:03
| 余滴