河内春人「『晋書』に見る魏と倭の関係」

ようやく届いたので，本日読む．

冒頭，『日本書紀』神功皇后摂政六十六年条注引『晋武帝泰初二年晋起居注』，『晋書』巻3武帝紀泰始二年条，および『晋書』巻97倭人伝の三つに，魏志倭人伝を加えた四つが，「三世紀の倭国に関する中国文献の基礎史料ということができる」とある．『三國志』巻4斉王紀正始四年条の「冬十二月，倭國女王俾彌呼遣使奉獻」という一文はどうなるのか．倭人伝と重複するので，無視か．どうも冒頭のⅠ「問題の所在」に研究史の整理がないので，主旨がつかみにくい．中国史研究者としてわかりきっていることもある（この部分はじつに退屈）一方，なんだかよくわからない箇所が突然出てくる．

すなわち，歴史の動態において新たに発現した事象をピックアップして，「前史」の欠を補うというのが陳寿のスタンスであり，西戎伝や南蛮伝は魏代における外交関係に特筆すべき内容を持たないことから削除されたのである（18頁）．

そうだろうか．曹魏と南蛮との間に外交関係があったのだろうか．曹魏と西戎との間には外交関係があり，大月氏国の親魏大月氏王や車師後部の魏王冊封などは特筆すべき内容だったのではないか．外交関係の有無や濃淡という点では，南蛮と西戎では対照的だったのではないか．東夷とくに倭との関係に関連する範囲では，徹底的とも言える論証を展開するが，それ以外の外交関係については淡泊なのが，日本史研究者に共通する特徴．

それにしても，満田剛氏のお名前が全て増田剛になっている．先日も西嶋定生が西嶋定正になっていたが，日本史研究者のコミュニティーの外側にいる者たちについては冷淡だな．