2019年 12月 27日
劉禅詔 |
「北伐」に関する劉禅詔をどう解釈しているのか知りたくて(知る必要があって),渡邉義浩主編/渡邉・仙石知子編『全訳三国志』第6冊(蜀書)(汲古書院,2019年11月)を取り寄せた.
件の箇所は,「涼州の諸国王は、それぞれ月支国と康居国の諸侯である支富と康植たち二十余人を派遣し、(諸葛亮のもとに)至ってその指揮を受け、大軍が北に出れば、直ちに兵馬を統率して、戈を奮い(漢軍の)先駆けになろうとしている」(一一九頁)と訳されている。涼州にあった非漢族の首領たち(涼州諸国王)が、中央アジアの本国(月支国・康居国)の諸侯を派遣したかのような解釈であるだけでなく、渡邉のこれまでの主張とも矛盾を来す結果になっている.あるいは,涼州に月支国や康居国があったとでも言うのだろうか.
周知のように,『三国志』の日本語訳は,早くに筑摩書房の世界古典文学大系のシリーズで刊行されており,現在ではちくま文庫で全8冊として刊行されている.一般向けで,かつ文学研究者の仕事なので,研究者,とくに私のような歴史研究者には不満がないわけではない.しかし『三国志』の読解には大いに参考にさせてもらっている.
屋上屋を重ねるようにして,今回,また全訳が刊行されることになったわけだが,今回のシリーズの意義は奈辺にあるのだろう.歴史研究者の作業なので(もっとも仙石は文学研究者で,渡邉は古典学者を自称しているようだが),得るところが大きいかとも思ったのだが,この劉禅詔の解釈を見ただけで,期待が萎えてしまった.残念ではある.今回のシリーズの目標や意図などは,第1冊の冒頭におそらく明記されているのだろう.しかし第1回配本をその第1冊ではなく第6冊にしたため,主編者・編者(同一人物が主編者と編者に名を連ねているというのも,中国の本に慣れ親しんでいる者としては,違和感が大ありだが)の目標や意図がさっぱりわからない.これは買い手や読み手に対して不親切というものだろう.買い手・読み手ファーストとは言えないと思う.同じ轍を踏まないようにしたいものだ.
by s_sekio
| 2019-12-27 05:52
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