2005年 10月 11日
「其」字 |
長沙呉簡の竹簡には,「其」字を書いて,ある物品群の内訳を導くものが少なからず含まれている.これを内訳簡と仮称しているが,このような例は漢簡にも見られるとのことである.またそれ以外にも,1384簡のように,「其」字(まで)を大書して,その下に複数行に分けて内訳を小さな文字で列挙しているものもある.このような例の代表的なものは年紀簿と呼んでいる戸籍簡で,そのなかの民籍の合計簡がある.やはり「其」字を大書し,その下に2行に分けて内訳すなわち当該戸のうちの男女内訳を小さな字で書いている.6簡や9簡を見ればわかる.このように大書された「其」字の下に内訳を小さな文字で書く形式は,じつは紙の文書にも継承されている.私の知る範囲は小さいが,例えば,サンクトペテルブルグ所蔵のДх02683v+Дх11074vや,Дх02887などがそれで,いずれもトゥルファン出土で,5世紀後半の帳簿様文書と推測されるが,図像化したような大きな「其」字の下に,小さく内訳が記されている.書写面が限られる簡牘とは違うから,わざわざ内訳を小字で書く必要もないだろうに,と思うのだが,簡牘から紙への移行に関わらず,帳簿の書式はこの点に関しては変化なく伝承されたということだろうか.
by s_sekio
| 2005-10-11 16:18
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